リサタビ列車

−絵描きバックパッカー・リサリサの、旅は、まだまだ続く−

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9.OCT.2004 ブリュッセル





王立美術館を出て、しばらく市内をぶらついた。

狭い路地を通り、のみの市を冷やかしながら歩いていると、まるで王宮のような裁判所の前に出た。
そこは少し高台にあり、ブリュッセル市内を見渡せる。
かわいらしい屋根が遠くの方まで広がっている。

裁判所前の広場と真下の道をつなぐ、ガラス張りのエレベーターが外に設置してある。
その前で、アコーディオンを弾いているおじいさんがいた。
テンポのいい、小刻みのリズムに惹かれ、観光客が集まってくる。
あたしもその輪に入り、少し遠めにその音を聞いていた。
古い街並が残るこの場所に、その音がとてもマッチしていて心地いい。
客がいなくなってもまだあたしはその場にいた。
にじりにじりとおじいさんに近寄り、ついには隣に座り込んで、小さく口ずさみながらその音を楽しんでいた。

おじいさんはニッコリあたしに笑いかけながら、アコーディオンを弾き続ける。

30分くらい座っていただろうか。
ケースにコインを入れ、ありがとう、と言ってその場を去った。


宿に戻り、レセプションでタバコを吸っていると、韓国人の男の子が話しかけて来た。

「日本人?韓国人?中国人?」
「日本人だよ」

同じアジア人同士、やはり話しやすく、話も弾む。
彼は日本に来たことがあるらしい。日本人は優しいよ、と彼はにっこり笑った。
そこにもう1人、アジア人が宿に入って来た。

「日本人だと思う?韓国人だと思う?」
と彼が聞いて来たので、
「ん〜、小奇麗だから日本人だと思うよ」
とあたしは答えた。

2人でじっとそのアジア人を見ていたので、そのコが話しかけて来た。

「(日本語)あの〜〜、この番号の部屋ってどこ?」

ほら、日本人だったでしょ?とあたしと韓国人のコは顔を見合わせて笑った。

3人で机を囲み、それぞれの旅路を話す。
韓国の男の子は、ドイツやオランダを回って来て、これから先を何も決めてないらしい。ガイドブックも持ってこなかったんだとか。そんなのなくてもどこでも行けるよ、と彼はちょっと得意気。
日本人の男の子は、10日間の小旅行でフランス・ベルギー・オランダを回るんだとか。結構ハードだ。だって実質8日間くらいしかないよ?

1時間くらい話してそれぞれの部屋に戻る。
まだメイチーが帰ってこない。カトリンがベッドに座って本を読んでいる。
会話がまったくなく、なんとなく気まずい。

夜遅くにメイチーが帰ってきた。
カトリンはもう寝ていたので、外で話そう、と2人で喫煙所へ向かった。
メイチーはかなり日本に興味を持っている。
シンガポールの実家でも、日本のアニメやドラマは大人気らしい。
日本語おしえて、とノートとペンを持って来た。
あたしも自分のクロッキー帳を取り出し、日本のドラマや俳優、漫画家の名前などを書き出した。
どうやらメイチーは、ジャニーズと、竹之内豊と、宇多田ヒカルが好きらしい。
他にも日本のマンガが人気があり、高橋留美子がトップらしい。
シンガポールは英語・中国語が母国語になるらしく、メイチーは漢字がわかる。
しかし、もう若い人の間ではほとんどが英語らしく、中国語はあまり分からないんだそうだ。
日本語の「じゃ〜ね〜!」にあたる、シンガポーリアン・イングリッシュを教えてもらった。


シンガポーリアン・イングリッシュ版「じゃ〜ね〜!」、それは、


『ばいばいら〜!』




次はオランダへ向かう。




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9.OCT.2004 王立美術館

はれ 12日目

ヨンギョンが朝早くに宿を出ていった。

のんびり朝食を食べて、だらだら出かける準備をしていたら、掃除のおばさんが部屋に入って来た。

「どうしたの?具合が悪いの?」
おばさん達は心配そうにあたしの顔を覗き込む。
「いえ、ぜんぜん。」
そう言うと、おばさん達は笑いながら、
「ここはね、10時以降に建物の中にいちゃいけないのよ。」
とほうきをグルグル回しながら、出てけと言わんばかりに窓の外を指差した。

慌ててYHをでて、今日の目的地の場所を確認する。

ブリュッセルには大きな美術館がある。
14世紀の宗教画から、近代絵画まで。
ここには主にネーデルランド、フランドル絵画が展示されている。
年代別に並べられているので、時代に沿って見ることが出来る。

○リサメモ美術館○(アーティスト名をクリックすると作品が見れるよ!)
初めてイコンを見た。宗教絵画は日本で見れる機会が少ない。かなり劣化しているが、とても静かでキレイ。
●Dieric Bouts 1415-1475 ネーデルランド 北方ルネサンス
「オットー皇帝の裁判」がある。4枚シリーズの予定だったが作者死亡のため、2枚。
●Bosch 1450-1516 ネーデルランド 北方ルネサンス
「快楽の園」3枚綴りの宗教画がある。この時代ではかなり異色の宗教画で、地獄絵などが得意な画家。
●Lucas Cranach 1472-1553 ドイツ 北方ルネサンス
「アダムとイブ」2枚綴り。とても滑らか。イブのフォルムがキレイ。対照的に描かれていて構成がシンプル。ドイツ・ルネサンスの代表。
●Pieter Brueghel 1525-1569 フランドル 北方ルネサンス
ブリューゲルの部屋に入ると、がらりと雰囲気が変わる。これまでの宗教要素がなく、モチーフは街の風景や人々の暮らしへ移っていく。宗教画を描かない作家は、この時代やはり異色だった。近代絵画の父といわれている。
●Rubens 1577-1640 フランドル バロック
ル−ベンスの残した作品はかなり多い。サイズも大きい。ドイツ生まれだが、ベルギーのアントワープを活動の拠点にし、何年間も旅をしていた。同じ年代の画家の絵とは少し違って、タッチが大きく残っていたり、空気や光の流れがかなり意識的で、ムーブメントがある。印象派的要素があるような気がする。

★北方ルネサンス★
南のイタリア・ルネサンスに対し、北のベルギー・オランダ・ドイツあたりに発展したのが北方ルネサンス。造形的な均衡や調和より、精神性や内面性を重視する傾向にあり、フォルムを崩したものも多い。
★ネーデルランド/フランドル絵画★
毛織物工業と貿易が盛んだった、15世紀フランドル地方。
ファン・エイク兄弟が油絵の技法を完成させ、一早くルネサンスが到来。このころのネーデルラント絵画はイタリア・ルネサンスに大きな影響を与えるほどだったが、16世紀後半は、逆にイタリアを手本とするようになった。


ここの王立美術館は、日にちや時間帯によって入れない部屋がある。
時間帯ならその時間が過ぎたら入れるので問題ないが、日にちや曜日だと、その日に行っても見れなかった、ということになるので、何世紀の部屋が何曜日に休みかをきちんと調べてから行った方がいい。

今日は19世紀後半の彫刻の部屋が休みで見れなかったが、他の部屋は全て見ることが出来た。
こんなにたくさんの宗教画を見たのは初めてで、おそらくこの作品の量自体、見たのも初めてなんじゃないだろうか。
ものすごい疲労感と充実感が同時に押し寄せる。

日本には、北方ルネサンスの作品はあまり来ない。
どうしても日本での人気所は、イタリア・ルネサンスやフランスの印象派だからだ。
その方が分かりやすく、また人も入るので儲かるからだろう。
もっともっと色んな作品に来てほしい。
そして、日本の人にはもっともっと絵画を感じる時間を作ってほしい。


作風がどのように変わっていくのかが、時代の流れに沿って感じることができた。


でも、あたしはまだ何も掴めてない。







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8.OCT.2004 ロンドンからブリュッセルへ


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はれ 11日目


ポンドがなくなり地下鉄に乗れなかったので、歩いてウォータールー駅、ユーロスターの発着駅へと向かう。

歩くこと40分。

危うく乗り遅れるところだった。

歩き方には、ユースの値段で7000円と書いてあったのに、チケット売場にいってみたらなんとその倍!!

どーゆーこと?

何度聞いても、それが一番安い切符だという。
でも、ユーロスター、乗ってみたいし・・・

まぁいいや。ユーロ圏内に入れば物価も安くなるし、節約出来るだろう。
2等席の切符を買い、出国手続きをすませ、周りの人に聞きながらブリュッセル行のユーロスターに乗り込む。


ユーロスターはかなり揺れる。
日本の新幹線ではありえない揺れ方だ。しかもちょっとボロい。
ドーヴァ海峡のユーロトンネルを渡り、フランスを通り、3時間後にベルギーの首都・ブリュッセルに到着。

1時間くらい到着が遅れた。

YHまでの道はすべて石畳。画材を乗せたキャリーが邪魔でしょうがない。
腕がつりそうになりながら、めずらしく迷うことなくYHに到着した。

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ブリュッセルは、首都にも関わらず、わりと古い建物が並んでいる。近代的な建物が少ないようだ。
やっぱりイギリスとは雰囲気が違う。
想像する”ヨーロッパ”って感じだな。

チェックインまで時間があったので、近所の散歩に出かけた。

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裏路地に入ると、とても殺伐としている。
なぜか裏路地に惹かれてしまうこの性格。どんどん奥の方まで探検。

・・・おもしろい!

イギリスにはなかった空気だ。

コンクリート道路がほとんどなく、車もタイヤをブルブルいわせながら石畳の道路を走っている。


宿に戻り、部屋でご飯を食べていたら、シンガポール人のコが入って来た。
今日の同室は、シンガポール人のメイチー、ドイツ人のカトリン、韓国人のヨンギョン、日本人のあたしの4人。

酒が好きだという話をメイチーにしたら、じゃぁみんなで飲みに行きましょう、ということになった。

考えてみたら、これがヨーロッパ初めての外食(外飲)。
イギリスではスーパーで買って来たり、自炊で賄っていたので、かなり楽しみ。


4人で街の中心へ出かけ、一件のバールに入る。

ヨンギョンは、イタリアに住んでいて、お菓子の修行をしているんだとか。
ベルギーにはチョコレートの勉強に来たらしい。
かなり酒好きらしく、とっても話が合う。
英語があたしと同じくらいのレベルだったので、お互いジェスチャー混じり絵混じりで会話。
とってもおもしろい人だ。

メイチーは、あたしと同じバックパッカーだ。
とても優しく、分かりやすい英語で話してくれる。

カトリンは、英語もフランス語もペラペラ。フランス語で注文する彼女をみてると、
とても19歳には見えなかった。
しかし、イエス/ノーしか言わない。ので会話が続かない。
こっちが英語よくわからないから、めんどくさいんだろう。


メイチーとカトリンがジェラートを食べたいと言うので、店を出て、ジェラート屋さんへ。

ヨンギョンと一緒に待っていると、突然、

「グォオオオオオオ!!!」

と叫び声を上げた全身伯爵コスプレの男に肩をつかまれた。
2人でビクビクしていると、男はまるで貴族のように一礼して、そのまま去っていった。

何がしたかったんだろう。
ヨンギョンと顔を見合わせ、彼の後ろ姿を2人でほけ〜っと見ていた。


宿に戻り、ヨンギョンと一緒に喫煙所でまた飲む。
彼女は本当におもしろいコ。
韓国の民族衣装を描いてもらい、あたしも日本の着物の絵を描いて交換。
イタリアでは、得にローマとミラノのスリに気を付けて、と彼女は言った。
キョロキョロせず、堂々としてないとダメよ!っと。
そして、もしミラノで泊まる宿がなかったら電話して、と、携帯番号を書いた紙をくれた。



ここの宿も、なかなか楽しそうだ。