リサタビ列車

−絵描きバックパッカー・リサリサの、旅は、まだまだ続く−


7.NOV.2004 雨季到来







昨夜、豪雨と雷が、ナポリ中に鳴り響いていた。
どうやら雨季に入ったらしいとのこと。


ナポリからさらに南下して、イタリアの地図でかかと部分にあたるバーリという街を目指そうと、ユースホステルの最寄り駅まで出た。

しかし、昨夜の大雨の影響で、電車が1本も動いてない。

ナポリ駅まで出ないとバーリに向かえない。

1時間くらい、電車に乗ったりホームに戻ったり。
でも全くもって、電車は動く気配がなかった。


バスでナポリ駅まで出れるという話を聞き、満員御礼のそのバスに乗り込む。

あ でもあたし、切符持ってない。

イタリアのバスは、乗る前に切符を用意しないといけないんだけど。

まあいいか。
どーせこれに乗ってる人みんな、キセルだろ。


重たいバックパックに背負われ、体は斜めに一本立ちのような厳しい体勢のまま、
キセルもバレずにナポリ駅に到着。

ナポリ駅からの電車には、遅れはほとんどなかった。



バーリに向かうためには、カセルタという街で電車を乗り換えないといけない。

カセルタはとても小さな田舎の駅。
しかしここには世界遺産に登録されている宮殿がある。
折角だから、待ち時間の間にでも見に行こう。

そう思って駅の外にでると、なにやら怪しいイタリア人が近寄って来た。

直後、危険を感じた。

彼の目はラリってて、挙動不振、言語も言葉の羅列のような話し方。
とても強い力で、あたしの腕をつかむ。

なんとかその手を振り切って、駅の中に逃げ込んだ。

外に出ようにも、そいつはずっと入口でウロウロしている。

とても怖くて。
結局、意気地なしのあたしは、
トイレもないその駅で、3時間ぼーっと過ごすはめになった。



バーリに到着したのは、もうずいぶん暗くなってからだった。

駅の外に出ると、道路中に水が溢れている。
どうやら南の方でもかなりの雨量だったらしい。

水浸しで大雨の中を、宿を求めて歩き回る。


もしかしてこの先ずっと雨なんだろうか?


尋常じゃない豪雨の中、まだこの先にある旅路を心配しながら、
ひさびさのシングルに寝つけなかった。

雨の音しか 聞こえない。







6.NOV.2004 忘れ去られた街



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ナポリ駅からヴェスヴィオ鉄道に乗って、約40分。

ヴェスヴィオ火山のふもとに、巨大な古代都市ポンペイはある。

79年8月24日、ヴェスヴィオ火山の大噴火で、
一昼夜、降り続けた火山灰によって埋め尽くされてしまった街。
一日で消えたしまった街。

18世紀に入って発掘が進められ、やっとその古代都市が顔を現わした。

当時のままの家や店、落書きなどが残っていて、
この街を歩いていると、その当時の生活風景が目に浮かび、想像が膨らむ。

お使いに出かけて寄り道してるメイドの役を、一人でこっそり楽しんでみたり。

そんな感じで遊んでいると、あっと言う間に日が暮れてしまう。
ここはとにかく巨大なのだ。



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橋や横断歩道のようなもの。
雨が降ると、
道路が浸水していたらしい。
石の間に見える凹みは、
当時の馬車の轍。


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お店のカウンター。
何屋さんかな?
あの凹んだところに火をおこして
何かを焼いていたのかしら。


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パン工場かな?
小麦をひく道具に見えるな。

それとも窯かな?


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お風呂屋さん発見。
赤いバスタブ。

う〜ん極楽極楽。


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ポンペイの壁画に使われてる赤は、
”ポンペイの赤”
と言われている。
今現在、どんな技術を使っても
この色は出せないんだとか。


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ポンペイのモザイク技術は、
かなりレベルが高かったらしい。
古代とは思えないくらい、
可愛らしいデザイン。


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火山灰に埋もれた人が中で朽ちて、
その場所が空洞となり、
そこに石膏を流し込んで型取りしたもの。

このようにしゃがんだまま、
埋もれてしまった人もいる。




街がまるまる、古代遺跡。
あたしの頭は飛びまくり。

一日中歩き回って、頭はすっかり古代へワープ。
目の前に、2000年近く前の人々が 見えてくる。
栄えていた街並みが 見えてくる。
街の音が 聞こえる。

そんな感覚。
だから遺跡巡りは やめられない。




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5.NOV.2004 ナポリキャッツ



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中央駅からさらに5駅くらい離れたユースホステルには、たくさんの猫がいた。

みんなユースの一員で、自由に1階と中庭を出入りしている。

犬もいた。
しかし、ここでは猫の方が勢力が強いのかもしれない。
猫に威嚇されている姿を何度か目撃した。



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中には凛としていて、日本にはいなさそうな顔だちのコも。
猫にも国籍があるのかもしれない。



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朝、子猫の泣き声が部屋にまで聞こえてきた。

ミーミー ミーミー
一匹だけの声ではない。
すぐ部屋を出て、声のする方へ行ってみた。

ユースの入口の前に、段ボール箱が置いてある。
中を覗いてみると、生まれたばかりの子猫が2匹、よたよた動いていた。


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母親猫は、このコ。

宿で出会った、アジアを旅してきた長期旅行者と一緒に中庭でご飯を食べていると、
猫たちが群がってきた。
とくにこの母親猫の食い付きは、凄まじい。

サンドイッチをテーブルに置いたまま、一瞬中に戻った。
帰ってくると、サンドイッチが袋ごとボロボロになっている。
ふと辺りを見ると、パンのかけらをくわえた猫が、こちらを振り向きながら逃げようとしている。

犬が、その猫がくわえているパンを狙ってのっそりと近付く。
しかし、猫の素早い動きと威嚇に負け、犬はすごすごとその場から引き下がった。

野良猫なのには変わりないが、ここの猫たちは、こうやってユースに泊まる客たちから、いろんな食べ物をもらって生きているんだろう。

ここの猫は幸せだ、と、長期旅行者は言った。
エジプトなどのノラ猫は、見るのもかわいそうなほど、痩せこけているらしい。
道に餌が豊富にないのだと。

人間と同じように、猫の世界も、
国によって生きていく上での過酷さが 違うのかも知れない。







5.NOV.2004 陽気なナポリっ子



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ヴァチカン市国を出てローマに戻り、ナポリに向けて南下した。

ナポリの気温は暑いほどで、周りのナポリっ子たちは、11月なのに半そでを着ている。

来る前に様々な悪い噂を聞いていた、ナポリ。
駅前は確かに汚く物乞いも多く、何人にも詰め寄られた。
今まで通ってきたイタリアのどこの街よりも、車の運転マナーが最高に悪かったりもする。

でも、気候がとっても陽気。

まるで初夏の気候のよう。


海岸に行ってみた。

少数のカップルたちが、海を見ながら笑いあっている。

遊んでる子どもたちの笑顔が、明るい。


しばらくそこに座って、ぼーっと海を眺める。

波の音が、心地良い。
澄んだ海が、キラキラしている。

子どもたち3人組が、海辺でじゃれあっている。

背の高い子、太った子、イタズラそうな子
どうやら3人で、海に落としっこしてるらしい。

2人が背後からそーっと忍び寄り、一人の背中を押す。
気付かれると、ワー!っと言いながら、辺りを駆け回る。

3人とも、こちらをチラチラ気にしている。
外国人だからだろう。
手をふってみた。
大きな動作で手をふり返してきた。

太った子が海に落とされた。
続いて背の高い子が、海に飛び込む。
イタズラそうな子は大笑いしながら、こちらに近付いてきた。

イタリア語で何か話しかけてくるが、こちらはイタリア語は分からない。
すると今度はジェスチャーに切り替えて、話しかけてきた。
平泳ぎの仕草をしながら、海にいる友だちを指差して、笑っている。

こちらに気付いた2人も海から上がってきて、近付いてきた。
今度はイタズラそうな子を、海に落とそうとしている。

イタズラそうな子は、ウワー!と笑いながら、逃げ回る。
背の高い子と太った子は、何か叫びながら、追い掛けていく。

とても陽気な笑顔たち。

この暖かな太陽の下に、とてもよく似合う。


側で釣りをしているおじいさんがいた。
白髪の少し長い髪に、キャップをかぶっている。
バケツの中には、まだ魚はいないようだ。

おじいさんもイタリア語で話しかけてきた。

あたしがイタリア語分からないと知ると、カタコト英語で、「旅行者かい?どこから?」と聞いてきた。
日本人で、今までイタリアのどこどこに行った、と話しているあたしを、ニコニコ笑いながら見ている。

その眼差しはとても暖かく、ゆったりとしたものだった。

そしてあたしはなんとなく、ああ、これがナポリなんだな、と、思った。







3.NOV.2004 たいへん臭い



ここの宿は、10人部屋の 男女混合ドミトリー。
赤い2段ベッドが5つ、置いてある。

あたしが取ったベッドは、入口のすぐ側の下段。
枕の近くに暖房器具も置いてあり、ポジションもなかなか良い。

住人は、あたし・美大生・欧人の女子3名、
そして中国人・アメリカ人・スペイン系など男子7名。

一日遺跡回りをしてかなり疲れていたので、
とくにこれといった交流はせず、布団に潜り込んだ。


・・・朝。


・・んっっ!!」


ものすごい鼻につく異常な異臭で目がさめた。

腐りきったチーズ
汗混じりの蒸れた足先
酢の物
納豆
アンモニア
パクチー

これらをブレンドしたような、並みならぬ異臭。
部屋全体に漂うそれで、嗅覚がおかしくなり、頭痛がしてきた。


どこだ・・・どこから発せられてるんだ・・・


吐き気を催しながら、自分の枕元に顔を近付ける。


・・んっっ!!!」


枕の近くの暖房器具の上に、見るも無惨なヨレヨレの洗濯物が置いてある。

タオル、Tシャツ、パンツ、靴下、、、

異臭の発生元は、雑巾かと見間違うくらいの汚い洗濯物だった。


犯人はだれだ?
アメリカ人か?
欧米人の体臭はものすごいからな。。

すっかり欧米系の男子を疑っていたあたし。

しかし、中国人男子とすれ違った時、あの異臭に限り無く近い臭いが・・!!!


お  ま  え  か ! !


彼は半乾きのその洗濯物を手に取り、風がよく入ってくる窓辺に干し直した。

外から入ってくる心地良い風に乗って、理解不可能なほどの異臭が部屋全体を囲う。


・・・なにをどうやってどうしたら、そんな臭いになるんだろう。

おそらく彼は、洗剤を切らしてしまったのではないか?
んでやむを得ず水洗い、だけど体臭と汗が染み込んだそれらに水だけでは対応しきれず、
さらに生乾きのいや〜な臭いをブレンドさせて、最高級の異臭が誕生。

欧米人のみなさん、疑ってスマン。



さぁ 気を取り直して。
ヴァチカン市国へ向かうぞ。